海外機関のESG情報を隔月でお送りいたします。
Legal Framework for Impact発行
PRI、Generation Foundation、UNEP FIが共同で法律事務所Freshfields Bruckhaus Deringerに委託した研究Legal Framework for Impactが7月に発行された。機関投資家が経済的リターンに対してサステナビリティそのものを目的とした投資をすることが11か国の法規制によって許容されているか又は義務付けられているかを調査。国によるが、アセットオーナーは、経済的リターンと並行してサステナビリティを追及することは許容され、経済的リターンを獲得するためにサステナビリティを追及する必要がある場合は、サステナビリティの追及が義務づけられるケースが多い。本研究は、今後の政策策定に役立つことが期待される。
https://www.unpri.org/download?ac=13902
個別セクターに対するネットゼロまでのセクター戦略(ロードマップ)を公表
Climate Action 100+は、新しい取り組みとして、個別セクターについて、投資家の期待値を示すネットゼロまでのロードマップを順次公表していく方針。2021年8月に第2号と第3号として、鉄鋼セクターと食品セクターのグローバル・セクター戦略を公表(第1号は、2021年1月に公表された空運セクター)。ネットゼロを達成するために必要な行動を示す。Climate Action 100+の創設ネットワークが執筆を担当しており、鉄鋼セクターはIIGCC(Institutional Investors Group on Climate Change)、食品セクターはCeresとPRI(Principles for Responsible Investment)、空運セクターはPRIが担当。
【鉄鋼セクター】
【食品セクター】
【空運セクター】
気候変動に関する開示ルール策定へ
ゲンスラー委員長が、年内までに気候変動に関する開示ルール案を作成するようスタッフに対して指示したことを2021年7月28日開催のPRIのウェビナーで、明らかにした。2021年3月に気候変動に関わる情報開示についてコメントを募集、コメントの3/4がルール策定を支持。
https://www.sec.gov/news/speech/gensler-pri-2021-07-28
NASDAQ上場企業、2名以上の多様性のある取締役の選任を求める
SECが、NASDAQ上場企業に対して、2名以上の多様性のある取締役の選任を義務付ける(コンプライ・オア・エクスプレイン)新しいルールを承認。女性を最低1名、マイノリティ又はLGBTQ+(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クイア)を最低1名選任する必要がある。取締役会の多様性に関する情報開示(性別、人種、LGBTQ+)も義務付けられる。
https://www.sec.gov/news/public-statement/statement-nasdaq-diversity-080621
https://www.sec.gov/rules/sro/nasdaq/2021/34-92590.pdf
Strategy for financing the transition to a sustainable economy
2021年7月に新しいサステナブル・ファイナンス戦略が公表された。既存のサステナブル・ファイナンス行動計画を強化するものであり、以下の6つの施策を含む。
1.既存のツールの拡大
2.中小企業と個人のアクセスの改善
3.経済・金融システムのサステナビリティ・リスクに対するレジリエンスの強化
4.金融セクターのサステナビリティへの貢献の拡大
5.EUの金融システムの安定
6.サステナブル・ファイナンスのグローバル化
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_3405
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:52021DC0390
Taxonomy Regulation Article 8 Delegated Act採択
タクソニミー規制第8条は、タクソノミーに沿った経済活動の割合の開示を求める。対象は、非財務情報開示指令(NFRD)が対象となる大企業。(企業のサステナビリティ報告に関する指令(CSRD)適用開始後は、CSRD対象の全ての上場企業。)その具体的な開示内容の詳細を制定する委任法が2021年7月に欧州委員会により採択された。金融以外の企業は、売り上げや設備投資などに占めるタクソノミーに準拠した割合の開示、金融機関は、金融資産や手数料収入などに占めるタクソノミーに準拠した割合の開示が求められる。企業のサステナビリティの把握とグリーンウォッシングの防止に貢献することが期待される。2022年1月より段階的に適用開始予定。
「欧州グリーンボンド」(EUGB)の基準を設定する規則案
欧州委員会は、「欧州グリーンボンド」(EUGB)の基準を設定する規則案を2021年7月に公表。「気候変動や環境に配慮した事業」の共通した定義がないことから、グリーンウォッシングのリスクが指摘されている。民間と国・地方自治体を含むEU域内外の発行体は、EUGB基準を自主的に満たすことで、発行する債券をEUGBと名乗ることが認められる。資金の割り当て対象となる事業が、タクソノミー規制が規定する6つの環境目的(①気候変動の緩和、②同適応、③水資源、④サーキュラー・エコノミー、⑤環境汚染の防止・抑制、⑥生物多様性・エコシステムの保護)のうち少なくとも1つに実質的に貢献することが必要。また、欧州証券市場監督局(ESMA)に登録した評価機関による外部評価が求められる。規則案は、EU理事会と欧州議会で審議され、2021年後半に適用開始される予定。
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:52021PC0391
執筆者:ESGバイオリン
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