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海外機関のESG情報(2021年11月)

 

海外機関のESG情報を隔月でお送りいたします。

 

International Corporate Governance Network(ICGN)

ICGN グローバル・ガバナンス原則の改訂

多くの投資家と各国政府が参考にしているICGNのグローバル・ガバナンス原則が2021年9月に改訂された。取締役会は、株主以外のステークホルダーの利害も考慮し、気候変動とヒューマン・キャピタルを含むサステナビリティに対して責任を負うことを明確にした。ステークホルダー間でバランスの取れた資本配分の重要性も協調された。その他、監査と株主総会に関する原則が新設された。

(英語)https://www.icgn.org/sites/default/files/ICGN%20Global%20Governance%20Principles2021.pdf

(日本語)https://www.icgn.org/sites/default/files/ICGN%20Global%20Governance%20Principles%20JPN_0.pdf

 

COP26に対する声明

ICGNが2021年10月にCOP26(国連気候変動枠組条約第 26 回 締約国会議)に対して、気候変動責任の共有に関する声明を2021年10月20日に出した。2050年までにネット・ゼロを達成するための科学に基づく目標の公約を始めとし、ネット・ゼロ炭素排出量への適正な移行に関して、ICGNが推奨する投資家、企業、監査人および政府・基準設定者が検討すべき事項がまとめられている。

(レター)

https://www.icgn.org/sites/default/files/ICGN%20Letter%20to%20President%20of%20COP26.pdf

(声明)(英語)

https://www.icgn.org/sites/default/files/ICGN%20Statement%20on%20COP%2026_ENG_Oct_20_2021.pdf

(声明)(日本語)

https://www.icgn.org/sites/default/files/ICGN%20Statement%20on%20COP%2026_JP_Oct_20_2021.pdf

 

Principles for Responsible Investment(PRI)

Net Zero Investment Consultants Initiative

Willis Towers Watsonなど12社の年金コンサルが、PRIによる支援の下、2050年までのネット・ゼロの達成を目指し、Net Zero Investment Consultants Initiativeを結成。各社が、ネット・ゼロに向けた投資助言を2年以内に開始することに対してコミット。

https://www.unpri.org/news-and-press/investment-consultants-with-usd-10-trillion-of-assets-under-advice-come-together-to-launch-global-net-zero-initiative/8557.article

 

日本の年金制度とサステナビリティ

PRIが日本の年金制度とサステナビリティに関するレポートを発行。日本の年金制度を概観し、各パート(GPIF、共済、企業年金基金、DC年金)におけるサステナビリティの考慮方法を解説。サステナビリティが必ずしも制度全体に渡って反映されていないことを問題視。3つの課題に焦点を当てる。

  • 公的年金においては、ESGをどのように組み込むかは各年金基金の裁量に任されている。
  • 私的年金においては、DC年金に対してESGを明示的にかつ体系的に組み込むことが求められていない。
  • GPIFのリーダーシップにより、日本の運用機関はESG に注力するようになったが、ESG へのアプローチは、主要な海外の運用機関に遅れをとっている。

https://www.unpri.org/download?ac=14610

 

政策予想シナリオの公表

PRIがInevitable Policy Response (IPR)に委託した気候変動に関する政策予想(2021 Forecast Policy)に基づくシナリオが公表された。社会的圧力から各種政策が導入され、気温上昇が2度以下に抑制されると予想。2030年までに炭素を排出しない自動車が全自動車の30%を占め、風力・太陽光が電力発電の30%を占めると予想。しかし、気温上昇を1.5度に抑制するためには、更なる政策が必要(Required Policy)であるとする。森林の乱伐を2025年までに止め、開発国(中国を含む)における石炭火力発電を2035年までに止める必要がある。

https://www.unpri.org/inevitable-policy-response/the-inevitable-policy-response-2021-forecast-policy-scenario-and-15c-required-policy-scenario/8726.article

 

Securities and Exchange Commission(SEC)

気候変動に対す情報開示に関する企業へのサンプル・レター

SECが、気候変動に関する情報開示に不備がある企業に対して送る書簡のサンプルを公表。書簡の質問は、SECの2010年の気候変動ガイダンスに基づく。同ガイダンスは、気候変動に関する規制の影響などの開示を求める。

https://www.sec.gov/corpfin/sample-letter-climate-change-disclosures

 

ファンドによる議決権行使結果の開示方法の改善

SECが、ファンドが議決権行使結果を個別開示するForm N-PXをより分析しやすくするために様式を標準化(行使結果の説明を議案ごとに関連付け、分類)する規制改訂案を9月29日に公表、コメントを募集(期限は60日間)。電子的に分析可能なフォーマットにする。その他、運用機関に役員報酬議案(いわゆるSay on Pay)の議決権行使結果をForm N-PXにより開示することを義務化。役員報酬議案の議決権行使結果の開示は、ドッドフランク・ウォール街改革・消費者保護法に求められている事項である。

https://www.sec.gov/news/press-release/2021-202

 

European Union (EU)

気候変動のストレス・テスト

欧州中央銀行(ECB)が欧州経済と銀行に対する気候変動のストレス・テストのペーパーを公表。短期的(2020年代)には、ネット・ゼロへの移行コストがかかるものの、何もしない場合と比較して、長期的(2050年)には、火事や洪水などの物理的なコストが大きく上回り、企業の収益性と銀行のクレジット・リスクが大幅に悪化することを示した。ECBは、来年、ユーロ圏の銀行に対して気候変動のストレス・テストを実施する予定である。

https://www.ecb.europa.eu/pub/pdf/scpops/ecb.op281~05a7735b1c.en.pdf?form=MY01SV&OCID=MY01SV

 

Climate Action 100+

2022年Net Zero Company Benchmark v1.1のスケジュール

Climate Action 100+が2022年Net Zero Company Benchmarkのスケジュールを発表。Net Zero Company Benchmarkは今後の対話や議決権行使の参考にするために、Climate Action 100+が対話の対象とする企業について10の指標を用い気候変動に対する対応状況を分かりやすく表示。2021年8月末時点のデータに基づき2021年9月より調査・分析を開始。2021年12月にドラフトが該当企業と担当投資家に共有され、データの誤り・欠如のチェックをする機会が与えられる。追加情報を12月末まで受付。2022年1~2月に最終化し、2022年3月に公表する。今回はメソドロジーに大きな変更はないが、2021年10月にコメントを募集し、2022年にバージョン2の開発を開始する予定である。

https://www.climateaction100.org/news/climate-action-100-shares-net-zero-company-benchmark-update-and-timeline-for-2022/

https://www.climateaction100.org/wp-content/uploads/2021/10/Benchmark-v1.1-summary-pack-Oct21.pdf

 

Global Reporting Initiative (GRI)

ユニバーサル・スタンダードの改訂とセクター・スタンダードの発行

GRIスタンダードのうち、全ての企業に適用される部分であるユニバーサル・スタンダードが2021年10月に5年ぶりに改訂された。OECD多国籍企業行動指針やビジネスと人権に関する国連指導原則との整合性をとり、企業による人権などに関するデューディリジェンスの状況が分かるようにデューディリジェンスを取り入れた。また、マネジメント・アプローチのモジュールの名前がマテリアル・トピックスに変更され、マテリアルなトピックの特定方法がより鮮明となった。2023年1月より適用されるが、より早い利用開始が推奨される。

その他、GRIとして初めてのセクター・スタンダードである石油・ガスのセクター・スタンダードを発行。セクター・スタンダードが存在する場合、そのセクターに属する企業にとってマテリアルである可能性が高いトピックの全てに対して情報開示が求められる。

https://www.globalreporting.org/about-gri/news-center/gri-raises-the-global-bar-for-due-diligence-and-human-rights-reporting/

https://www.globalreporting.org/about-gri/news-center/oil-and-gas-transparency-standard-for-the-low-carbon-transition/

 

執筆者:ESGバイオリン

 

 

 

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