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海外機関のESG情報(10月)


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海外機関のESG情報を隔月でお送りいたします。


ICGN(International Corporate Governance Network)

 

投資顧問会社によるESGに関する開示の米国SECルール案に対するコメント

ICGNが投資顧問会社によるESGに関する開示のSECルール案に対するコメントを公表。ESG要素の取組度合いによって目論見書における開示が決まることについて、支持する。主なESG運用戦略の中から該当するものをチェックする様式は、有用であると考える。ESG戦略のインパクトは、アニュアルレポートにて開示されるべきである。環境に焦点を当てるファンドは温室効果ガス(GHG)排出量を開示する義務を支持する。議決権行使に関するルール案(ESG議案の賛成割合の開示)も支持する。

https://www.icgn.org/us-sec-environmental-social-and-governance-disclosures-investment-advisers-and-companies

 

欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)案に対するコメント

ICGNが欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)案に対するコメントを公表。概ね支持するが、基準が複雑で詳細過ぎるという。ダブル・マテリアリティについて、サステナビリティへのインパクトは主観的になりがちで、報告基準への取り組みは困難を伴う考える。国際基準との適合性も更なる努力が必要である。

https://www.icgn.org/efrag-draft-european-sustainability-reporting-standards-esrs

 

気候変動についての情報開示に関するSECのルール案に対するコメント

ICGNが気候変動についての情報開示に関する米国SECのルール案に対するコメントを公表。TCFDをベースとすることは評価する。気候変動に関する目標の達成と報酬の関係の開示を求めるべきである。脱炭素へのトランジション計画の開示についても支持的である。シナリオ分析の開示は、義務付けられないが、ICGNは、シナリオ分析は有用であると考える。ルール案は、Scope3の開示について、重要である場合、又はScope3を含むGHG排出量の削減目標を設定している場合において義務付ける。ICGNは、気候変動リスクが高いセクターの企業とネットゼロ戦略を公表している企業は義務付けるべきであるという考え。気候変動が会計上の仮定に織り込み、必要に応じて財務諸表に反映するというガイダンスも支持する。

https://www.icgn.org/us-sec-climate-change-disclosure

 

Climate Action 100+

 

Climate Action 100+のネット・ゼロ・ベンチマークの脱炭素戦略の指標に関する記事

Climate Action 100+がネット・ゼロ・ベンチマークの脱炭素戦略の指標に関する記事を発行。ネット・ゼロへの目標を設定後、その目標をどのようにして達成するかを開示する必要があるだけではなく(指標5.1a)、各パーツが定量的にどれだけ貢献するかの開示も必要である(指標5.1b)。Climate Action 100+の対象企業の36%は、中期・長期の脱炭素の目標を公表していない。49%は、目標をどのようにして達成するかを開示しているが、各パーツが定量的にどれだけ貢献するかを開示しているのは、17%に過ぎない。

https://www.climateaction100.org/news/describe-quantify-understanding-the-benchmarks-decarbonisation-strategy-indicator/

 

Investor Guide for Engaging in Asia(アジアの対話ガイド)

Climate Action 100+がInvestor Guide for Engaging in Asia(アジアの対話ガイド)を発行。ベンチマークに対するアジア企業の課題を説明し、対応方法のケーススタディを挙げる。アジア企業の課題と対応方法は、欧米企業の課題と対応方法と異なるため、アジア企業にカスタマイズされている。

https://www.climateaction100.org/news/engaging-for-ambition-in-asia/

 

ISSB(International Sustainability Standards Board)

 

IFRS財団は、ESG情報開示の基準づくりを担う国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の理事に小森博司氏を含む3人を新たに任命したと発表した。日本からの任命は初めて。小森氏は2015年から年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のスチュワードシップ・ESG部門の立ち上げを担い、今年3月まで同部門を統括していた。小森氏が理事に就任することで日本からの影響力向上に期待する声が出ている。

https://www.ifrs.org/news-and-events/news/2022/08/three-members-appointed-from-europe-and-japan-to-the-issb/

 

米国SEC(Securities and Exchange Commission)

 

SECが報酬と企業のパフォーマンスとの関係に対する開示に関するルールを採択

SECが報酬と企業のパフォーマンスとの関係に対する開示に関するルールを採択した。30日後に施行される。過去5年の報酬とパフォーマンス指標の表の開示を義務付ける。パフォーマンス指標は、TSR(株主総利回り)、業界平均のTSR、純利益、企業によって選択された指標である。

https://www.sec.gov/news/press-release/2022-149

 

SECが議決権行使に対する助言に関するルールを修正

  • 議決権行使に対する助言を企業に適時に提供する、②企業の助言に対するコメントを

投資家に適時に提供する、という2020年に導入された新しいルールを撤回。理由は、助言の適時性と独立性を害するため。

https://www.sec.gov/news/press-release/2022-120

 

EU(European Union)

 

ESG格付とクレジット格付におけるESG要素に対するコメント募集に関するレポート発行

EU委員会が2022年4月4日~6月10日に実施したESG格付とクレジット格付におけるESG要素に対するコメント募集の結果をまとめたレポートを発行。回答者の83%がESG格付のメソドロジーの透明性に問題があるという。91%がメソドロジーにバイアスがあるという。また、81%がESG格付の相関が不十分であるという。80%が規制が必要であると考える。82%は、免許・登録制度が必要であると考える。94%がクレジット格付がESG要素にどのように影響されているかを理解することが重要であるというが、70%がメソドロジーがどのようにESG要素を取り組んでいるかの開示が不十分であるという。一方で、72%は、現在のトレンドとESMA(欧州証券市場監督局)のガイドラインが十分であると考える。

https://ec.europa.eu/info/sites/default/files/business_economy_euro/banking_and_finance/documents/2022-esg-ratings-summary-of-responses_en.pdf

 

PRI(Principles for Responsible Investment)

 

IFRSサステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項と気候変動の情報開示基準の草案に対するコメント

PRIがIFRSサステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項と気候変動の情報開示基準の草案に対するコメントを公表。概ね支持的。

全般的要求事項に対する主な推奨事項は、以下の通り。

①マテリアリティの評価方法の強化
②ガバナンスに関する追加的な開示
③戦略に関する追加的な開示
④リスク管理に関する追加的な開示
⑤指標に関する追加的な開示
⑥企業のバリュー・チェーンの定義・開示
⑦企業と事業所・工場の地理的な位置の開示
⑧事例やガイダンスの追加

https://www.unpri.org/download?ac=16673

 

気候変動の情報開示基準に対する主な推奨事項は、上記①~②、④、⑧に加え、以下の通り。

①トランジション計画に関する追加的な開示
②TCFDに沿った気候変動のシナリオ分析を義務化
③定量的開示情報の計算根拠の開示
④産業レベルでの物理的なリスクの開示強化
⑤エネルギー利用率が最も高い産業について、スコープ1、2と重要なスコープ3のGHG排出量の開示を義務化

https://www.unpri.org/download?ac=16674

 

執筆者:ESGバイオリン

 

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