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海外機関のESG情報(2月)


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海外機関のESG情報をお送りいたします。

ICGN(International Corporate Governance Network)

 

金融庁のサステナビリティ及びコーポレートガバナンスの情報開示に関する内閣府令改正案についてのコメントを公表

ICGNが、金融庁のサステナビリティ及びコーポレートガバナンスの情報開示に閣府令改正案(以下「府令」)についてのコメントを公表した。府令が求めているように、企業に有報の「戦略」と「指標と目標」で「重要」と考える持続可能性の課題を開示することを支持するとしている。また、以下について支持・要望するとしている。

  • 有価証券報告書(有報)の「戦略」セクションと「指標と目標」セクションで、企業の人的資本管理の方針と人的資本管理のインフラストラクチャを改善するための方策を開示することを企業に求めていることを支持
  • 「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」の開示を義務付けることを支持
  • 府令は気候変動関連の開示について言及しておらず、府令は、明示的にすべての企業が気候変動問題を有価証券報告書の「ガバナンス」および「リスク管理」セクションで開示し、また気候変動問題の重要性について真剣に検討し「戦略」と「指標と指標」セクションにおいて、温室効果ガスのスコープ 1 、スコープ 2 及びスコープ 3 の排出レベルを含む開示を検討することを求めたい。
  • 取締役会、指名委員会、報酬委員会、監査委員会又はその他の委員会の活動状況の開示について、取締役会の頻度、検討の対象となる課題、取締役メンバーの出席率を含め、有価証券報告書での開示の義務づけを歓迎
  • 政策保有株式を保有する報告企業が株を保有する場合、企業との取引関係の開示を追加することを強く支持

https://www.icgn.org/japan-fsa-revision-sustainability-and-corporate-governance-disclosure-december

 

金融庁が招集する金融審議会ディスクロージャー・ワーキング グループ(DWG)で議論されている企業の四半期開示に関し、書簡を金融庁に提出

ICGNが、金融庁が招集する金融審議会ディスクロージャー・ワーキング グループ(DWG)で議論されている企業の四半期開示に関し、以下の趣旨の書簡を金融庁に提出した。

日本では、2 種類の四半期開示の義務、すなわち、東京証券取引所が上場規則に従って求める四半期決算短信、金融庁が金融商品取引法によって求める四半期報告書がある。日本での四半期開示の今後の見直しの目的は、元来、これら 2 つのアプローチを合理化し、単一の四半期決算短信とすることである。その目的は、企業の報告負担を軽減し、四半期毎の開示の監督を単一の当局に統合することである。ICGN は、四半期ごとの開示を義務付けるべきかどうかについて世界的な統一見解を持たないが、日本の場合、この要件を廃止しないよう金融庁に奨励する。

https://www.icgn.org/japan-fsa-quarterly-corporate-reporting-december

 

Climate Action 100+

 

ネット・ゼロ・カンパニー・ベンチマーク

10月に3回目のネット・ゼロ・カンパニー・ベンチマークが公表された。ネットゼロに対するコミットメント(2050年目標)が増えているが、それを実現するために中間目標と脱炭素化戦略を設定している企業は未だ不足している。例えば、地球温暖化を2℃以下に抑えることと整合性のある脱石炭計画を持つ電気事業会社は3分の1以下である。

https://www.climateaction100.org/news/climate-action-100-net-zero-company-benchmark-shows-continued-progress-on-net-zero-commitments-is-not-matched-by-development-and-implementation-of-credible-decarbonisation-strategies/

 

ISSB(International Sustainability Standards Board)

 

スコープ3の温暖化ガス(GHG)排出量の開示を義務付け

ISSBは、スコープ1と2のGHG排出量の開示に加え、スコープ3のGHG排出量の開示も求めることを決定した。スコープ3のGHG排出量の開示については、導入の時間的な緩和措置を設ける見込み。

https://www.ifrs.org/news-and-events/news/2022/10/issb-unanimously-confirms-scope-3-ghg-emissions-disclosure-requirements-with-strong-application-support-among-key-decisions/

https://www.ifrs.org/news-and-events/news/2022/12/issb-announces-guidance-and-reliefs-to-support-scope-3-ghg-emiss/

 

気候関連のシナリオ分析を義務付け

ISSBは、企業が気候変動に対する耐性を報告し、気候変動に関連するリスクと機会を特定し、情報開示を支持するために、気候関連のシナリオ分析を行うことが求められることを確認した。また、ISSBは、シナリオ分析の実施方法に関するガイダンスを作成者に提供するために、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が開発した資料の活用を含め、作成者への適用支援を行うことに合意した。

https://www.ifrs.org/news-and-events/news/2022/11/issb-confirms-requirement-use-climate-related-scenario-analysis/

 

CDPがIFRS S2気候変動関連のサステナビリティ情報開示基準をCDPのプラットフォームに織り込むことを決定。

https://www.ifrs.org/news-and-events/news/2022/11/cdp-to-incorporate-issb-climate-related-disclosure-standard-into-global-environmental-disclosure-platform/

 

SEC(Securities and Exchange Commission)

 

Goldman Sachs Asset ManagementをESG方針と手続きの不履行で告発

SECは、Goldman Sachs Asset Management, L.P. (GSAM) を、環境・社会・ガバナンス (ESG) 投資として販売された2つの投資信託と1つの個別管理勘定戦略に関する方針と手続きの不履行で告発した。この告発を解決するために、GSAMは400万ドルのペナルティを支払うことに同意した。

https://www.sec.gov/news/press-release/2022-209

 

議決権行使の開示を強化する規則を採択し、「セイオンペイ」の開示を義務付け

SECは、登録投資ファンドによる議決権行使の開示を強化する規則を採択し、機関投資家向け「セイオンペイ」投票の開示を義務付けた。20年近く前から、登録ファンドは委任状による議決権行使の記録をフォームN-PXで開示することが求められてきたが、ファンドはこれまで一貫した方法で、あるいは機械で読み取り可能なフォーマットで議決「権を開示することを求められていなかった。委任状による議決権行使の報告を強化するため、今回の改正では、ファンドやマネージャーが各議案を種類別に分類し、委員会の委任状規則の対象となる委任状や「プロキシカード」がある場合には、投資家が関心のある議案を特定し、投票記録を比較できるよう、投票事項の説明や順序を発行者の委任状に関連付けることが要求される。また、この変更により、ファンドやマネージャーがどのように報告書を構成しなければならないかが規定され、報告書の分析を容易にするために構造化データ言語を使用することが要求される。ファンドや運用会社は、投票された、あるいは投票するよう指示された株式数、貸し出され回収されずに投票されなかった株式数を開示することも要求される。この後者の要件は、証券貸付活動がファンドやマネージャーの委任状による議決権行使にどのような影響を与えうるかについて、株主に理解を深めてもらうためのものである。新規則及び書式改正は、2023年7月1日以降に発生する議決権行使から適用され、改正の対象となる最初の届出は2024年に行われる予定である。

https://www.sec.gov/news/press-release/2022-198

 

EU(European Union)

 

欧州議会及び欧州理事会企業持続性報告指令(Corporate Sustainability Reporting Directive :略称CSRD)を採択

欧州議会及び欧州理事会によりCorporate Sustainability Reporting Directive (CSRD)が採択された。新ルールの適用開始は、2024年~2028年。

  • 公共の利益に関わる大企業(従業員500人超)で既に非財務情報開示指令の適用対象の企業は、2024年1月1日(レポートは、2025年より)より適用開始。
  • 現在、非財務情報開示指令の適用対象でない大企業(従業員250人超)かつ・又は売上が40百万ユーロ以上の企業かつ・又は総資産が20百万ユーロの企業は、2025年1月1日(レポートは、2026年)より適用開始。
  • 上場している中小企業とその他企業は、2026年1月1日(レポートは、2027年)より適用開始。中小企業は、適用開始を2028年まで延期できる。

Council gives final green light to corporate sustainability reporting directive – Consilium (europa.eu)

 

執筆者:ESGバイオリン

 

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