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デジタル化と併存する社会課題とは何か

 

 

GAFAの躍進と社会課題

世界の時価総額ランキングの地図を塗り替えた“GAFA※1”が飛躍的な成長を続けている一方で、社会に影響を及ぼす課題を生み出していることも指摘されるようになり、“GAFA規制“という言葉を耳にする機会が増えました。昨年は米国議会の公聴会で反トラスト法についてGAFAのトップ4人が揃い証言している映像は記憶に新しいと思います。では、GAFAの社会課題とは一体何を指しているのでしょうか。

 

ガバナンスに関する国際団体のInternational Corporate Governance Network(以下、ICGN)が、今年の大きなイベントの一つとして、ICT※2セクターの特にBig5※3+テスラにおけるサステナビリティに関するガバナンスの課題に着目するウェブセミナーを開催しました。

 

ウェブセミナーと同時にGovernance and Big Tech: Setting the tone on data, privacy and (mis)informationと題するレポートがリリースされ、GAFAのビジネスが生み出す社会課題について述べられており、意識を高めるよう呼びかけています。

 

レポートで述べられている3つの観点からの主な課題や論点

①経済的な課題

  • 規模が大きいが故に寡占状態であり、公正な競争を妨げている可能性
  • 膨大な顧客データをマネタイズしているビジネスモデル
  • グローバルにビジネスを展開していながらも税率が低い国で課税されるように租税回避している可能性

 

②社会的な課題/論点(主に人権問題)

  • 個人情報やプライバシーの保護(個人情報がマネタイズされているなど)が不十分である可能性
  • バイアスをかけた情報を流すことにより人々の行動に影響を及ぼすことができる点
  • SNSに中毒になる若者の問題やいじめの問題
  • ブロックチェーンにおけるエネルギー消費の問題

 

③ガバナンスにおける課題/論点

  • Big5が導入しているデュアル・クラス・ストックの問題(創設者の議決権の割合が出資の割合より高く、少数株主の利益が軽視されるリスク)
  • サステナビリティに関するガバナンスが十分ではない可能性

(出所:Governance and Big Tech: Setting the tone on data, privacy and (mis)informationより筆者抜粋)

 

課題に対する欧州と日本の主な規制

上記のような課題に対して、各国で規制を導入する動きがでています。欧州では、個人情報の保護に関する規則として、2016年に「General Data Protection Regulation」 (GDPR)が発効され、2018年に施行されました。日本では、EU一般データ保護規則と呼ばれていますが、EUが策定した個人情報のプライバシーとセキュリティに関する規則であり、欧州で取得したデータを欧州の外に持ち出すことが原則禁止されています。違反した場合には罰則の適用もあります。

 

続いて欧州では昨年2020年に、Digital Services Act(デジタルサービス法案)とDigital Markets Act(デジタル市場法案)が発表されました。前者は違法なコンテンツへの対策やターゲット広告についての透明性などを求めるもの、後者は大手ICT企業が不当な条件を設定して公平な競争を阻害しないようにするものですが、実質的にはGAFAを規制する法案であるといわれています。

 

日本でも「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が本年2月に施行され、4月に特定デジタルプラットフォーム提供者を指定し、巨大ICT企業に規制をかける動きが始まりました。この法令では、取引の透明性や公正性を確保するために、特定業者に取引条件等を開示することなどが求められました。日本でも楽天が指定されたことにより、早速「楽天市場」の出店店舗に対して基本的な項目を開示したことや、それに対する苦情処理などの窓口をもうけたことが発表されています。

 

(1)物販総合オンラインモールの運営事業者

指定した事業者 (参考)当該事業者が提供する物販総合オンラインモール
アマゾンジャパン合同会社 Amazon.co.jp
楽天グループ株式会社 楽天市場
ヤフー株式会社 Yahoo!ショッピング

(2)アプリストアの運営事業者

指定した事業者 (参考)当該事業者が提供するアプリストア
Apple Inc.及びiTunes株式会社 App Store
Google LLC Google Playストア

(出所:経済産業所ウェブサイトより抜粋 https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210401003/20210401003.html

 

他にも租税回避の問題については、一部デジタル課税を課すという対応が始まりました。例えば英国では一定の売上規模のICT関連企業に対し、自国のユーザーから上がる収益の一部に対して2%課税されることになっています。このような規制がどこまで実効性を伴い課題解決の糸口につながるのか、今後の動向が注目されます。

 

サステナビリティに関するガバナンス

規制の整備が進む中、各社のガバナンス体制についても問題点が指摘されています。レポートでは、規制を作るだけでは十分ではなく、マネジメント自らがサステナビリティに対する意識を高め、関与するガバナンス体制を求めています。サステナビリティに関する経営課題への対応については、それを推進し監督するガバナンス体制がGAFAに限らず問われており、欧州ではサステナビリティに関するガバナンス体制を促進する法規制の導入も検討されています。

 

ICT企業の社会課題からの示唆

GAFAは巨大であるがゆえに、社会課題も大きく取り上げられていますが、コロナ禍でZoomなどGAFA以外のICT企業もクローズアップされています。実際に、昨年はZoomがアプリの脆弱性やセキュリティ上の懸念などに関して指摘されているというニュースやLINEのデータマネジメントについてもメディアで大きく取り上げられました。

 

最近ではデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉も浸透しはじめ、ICT企業以外にも各社の経営にデジタル戦略が盛り込まれ始めています。デジタル化と併存する社会課題への取り組みは、企業に大きな打撃を与えるリスクにもビジネス機会にもなりえます。ICT企業だけでなくDX戦略を掲げる企業にとっても、注目すべき取り組みであると思います。

 

また、ICGNは前出のレポートの中で、機関投資家は当該社会課題に関してICT企業とエンゲージメントすべきであると求めています。同レポートにはエンゲージメントの際の具体的な質問の一例も掲載されおり、規制の側面だけではなく、機関投資家側からも今後対話を通じて企業に対し社会課題への取り組みを促す環境に変化していくと考えられます。

 

執筆者:ESG Castanets

 

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